横浜市青葉区たちばな台病院・たちばな台クリニック

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救急・急性期の役割も果たすコミュニティホスピタル / コミュニティホスピタル実録日誌

救急・急性期の役割も果たすコミュニティホスピタル / コミュニティホスピタル実録日誌

医療コンサルタントとして全国の病院支援に携わり、
コミュニティホスピタル構想の立ち上げにも初期から深く関わってきた小松大介さんが、
自らの経験と想いを綴る連載がスタートしています。
全国にコミュニティホスピタルを拡げていくために、理想論だけでは語りきれない実践の歩みをご覧ください。

地域に無くてはならない病院、けれども・・・

横浜市青葉区に位置するたちばな台病院は、134床という中規模ながら年間1500台以上の救急車を受け入れ、年間800件の手術を実施する急性期病院です。一般内科、消化器外科、整形外科、循環器内科、血管外科、透析といった専門領域を軸に、24時間365日の救急医療を提供し、地域の急性期医療を支えてきました。横浜市の二次救急指定病院として、コロナ禍においても地域で初めて発熱外来を設置し、最大32床のコロナ病床を稼働させるなど、まさに地域になくてはならない存在として機能してきました。外来患者は1日350人強が来院し、地域に根ざした病院として長年信頼を築いてきたのです。

しかしながら、地域には大学病院や400床以上の大規模急性期病院も複数存在しています。そうした環境の中で、たちばな台病院は救急急性期医療で頑張ってきたものの、最先端の手術設備や高額医療機器への投資には限界があり、また医師確保の課題もあって、このままでは先行きに不透明感が出ていました。大規模病院との差別化をどう図るか、救急や手術に力を入れてきた病院としての強みを活かしつつ、地域の中でどのような役割を果たしていくべきか、その方向性を模索する時期にきていたのです。

引き算ではなく、足し算の発想でコミュニティホスピタルへ転換する

そうした中、当時のオーナーから相談を受け、一般社団法人C&CH(コミュニティ&コミュニティホスピタル)協会として、コミュニティホスピタルに向けた取り組みを始めることとなりました。急性期病院からコミュニティホスピタルへの転換という話を聞くと、”救急をやめる”とか”専門医療を縮小する”といったイメージを持たれる方もいるかもしれません。しかし、たちばな台病院で目指したのは、そうした引き算の発想ではありませんでした。救急・急性期の強みは維持しながら、地域包括ケアの機能を加えていくという、足し算の発想でのコミュニティホスピタルへの転換だったのです。

実は青葉区は、「あおばモデル」と呼ばれる先駆的な地域包括ケアシステムの取り組みが進んでいる地域でもあります。将来の医療・介護ニーズの増大、病床不足に対応する「地域完結型医療」を構築するために、在宅医療の供給量を増やすこと、在宅医療を支えるバックベッド機能を持つ病院の必要性が示されてきました。この地域は400床以上の大規模病院が高度急性期や急性期を担っている一方で、高齢者の病状悪化に対応し、速やかに入院できる地域密着型の病院が圧倒的に不足していました。
たちばな台病院がコミュニティホスピタルに転換することは、この「あおばモデル」に不足していたピースを埋め、地域包括ケアシステムの拠点となることへの期待にも繋がりました。

大きな一歩を踏み出すまでの準備期間

関与してしばらくは、既存機能を強化しつつ、運営体制の整備や細々とした業務改善に取り組んできました。また地域活動としてのお祭り参加や自治会等への啓蒙活動なども行い、病院が地域とつながるための土台づくりを進めてきました。病院の体制や文化を大きく変えるには時間がかかり、既存の専門医療と新しい機能をどのように融合させていくかについては、試行錯誤が続いていたというのが正直なところです。

躍進のとき

そして2025年10月、大きな転機が訪れました。C&CHから総合診療医の常勤医3名が赴任したのです。
伊藤先生、金杉先生、渡邉先生という、CCH総診1期生の先生お二人と地域で総合診療・家庭医を志してこられた先生です。この3名の先生方の赴任によって、たちばな台病院は一気に動き出しました。

総合診療医たちが赴任して印象的だったのは、既存の急性期・専門医療に対するリスペクトを持ちながら、病院全体の医療の質を高めようとする姿勢でした。整形外科や消化器外科、循環器内科の先生方が長年培ってきた専門性や、救急医療での実績を否定するのではなく、その強みを活かしながら、総合診療医として何ができるかを考えて動いておられるのです。救急での初期対応に積極的に関わり、入退院への介入を強化し、また地域の大学病院集中治療室との連携も進みはじめました。さらに、入院時から訪問診療を見据えた対応を行うことで、退院後の生活まで見通した医療を提供できるようになってきました。こうした総合診療医の関わりは、入退院の活性化や病床稼働の向上、訪問診療の拡充に大きく寄与しています。

総合診療医が柔軟に対応することによって、病院としての受け入れ幅が確実に広がっています。例えば、救急で運ばれてきた高齢者の患者さんで、初期的な診断や対応は総合診療医が対応しつつ、院内に専門がある場合は専門医に繋いだり、また併存する複数の慢性疾患や認知症、社会的な課題については改めて総合診療医が対応するといった連携が生まれています。また、急性期治療が終わった後の在宅復帰支援においても、総合診療医が中心となって多職種チームをコーディネートし、スムーズな退院調整が進みつつあります。専門医が得意とする領域は専門医が担い、総合的な視点や多職種連携が必要な場面では総合診療医が前に出る。そうした役割分担と協働が自然に生まれてきたことで、病院全体の雰囲気も変わってきました。

”きっと受け入れてくれる”

地域連携や訪問診療も活性化してきています。地域の医療機関や介護事業所との連携も、総合診療医が窓口となって動くことで、これまで以上にスムーズになっています。訪問診療についても、急性増悪時にはすぐに病院で受け入れられるという安心感があることで、地域からの信頼も高まってきています。在宅で療養している患者さんが体調を崩した際に、「たちばな台病院なら受け入れてくれる」という安心感が、地域の在宅医療を支える大きな力になっているのです。

今後の方向性としては、病棟構成を地域にあったものに変更しつつ、総合診療部門の拡充を進めていく予定です。急性期病棟と回復期・包括期病棟のバランスを見直し、地域のニーズに応じた柔軟な病床運用を目指します。また総合診療部門については、さらに医師を増やすと同時に、教育体制も整えていきます。同善会や水海道さくら病院で実践してきた総合診療医の育成プログラムをたちばな台病院でも展開し、次世代の総合診療医を育てる拠点としての機能も持たせていきたいと考えています。

そして何より、積極的に地域活動や訪問診療を進めることで、救急・急性期に強いコミュニティホスピタルのあり方を形作っていきます。「いざという時には駆けつけられる病院」でありながら、「普段から地域に寄り添い、健康を支える病院」でもある。整形外科や消化器外科、血管外科等の手術や循環器、透析などにも対応できるため、たとえ一時的に医療的なトラブルにあっても、救急対応とその後の入院によるリハビリ、退院後は在宅医療でフォローすることができます。このような急性期から在宅医療、看取りまで一貫した医療サービスを提供することで、住み慣れたこの地域で安心して最期まで暮らせる環境をつくる。そんな新しいコミュニティホスピタルのモデルを、たちばな台病院で実現していきたいと思っています。

色んな形があっていい、誇り高く必要とされる存在に

これまでのブログで紹介してきた同善会水海道さくら病院山下病院は、それぞれ回復期リハビリ、透析医療、消化器専門医療という異なる強みを持った病院でした。たちばな台病院は、救急・急性期という、また別の強みを持った病院です。コミュニティホスピタルという概念は、決して一つの型にはまったものではなく、それぞれの病院の歴史や強み、地域の特性に応じて、様々な形があっていいのだと思います。大切なのは、地域に必要とされる医療を提供し続けること、そして医療者が誇りを持って働ける環境を作ることです。

最後に

たちばな台病院の挑戦は、まだ始まったばかりです。総合診療医が赴任してまだ3ヶ月ほどですが、すでに現場では様々な変化が生まれ始めています。これからどのように発展していくのか、私自身も大きな期待を持ちながら、支援を続けていきたいと思っています。救急・急性期に強いコミュニティホスピタルとして、たちばな台病院が「あおばモデル」における地域包括ケアシステムの中核病院として、地域の皆さんにとってなくてはならない存在として、さらに発展していけるよう、今後も全力でサポートしていきます。