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#4 安心して強い練習ができるチームを支援する 大束忠司監督が語る、ボランティア活動がもたらした変化

#4 安心して強い練習ができるチームを支援する 大束忠司監督が語る、ボランティア活動がもたらした変化

第4回 安心して強い練習ができるチームを支援する  大束忠司監督が語る、ボランティア活動がもたらした変化

#たちばな台病院リハビリテーション科  #日本体育大学バドミントン部  #CCH

第1回から第3回までは、髙橋さんの関わりによって学生一人ひとりにどのような変化が生まれたのかを見てきました。第4回では視点をチーム全体へ広げます。日本体育大学バドミントン部を率いる大束忠司監督は、この活動を単なる“ケガ対応”ではなく、学生の主体性を育てる支援として受け止めています。

監督が見ているのは、今だけではない

オリンピック出場経験を持つ大束監督が、髙橋さんの関わりでまず大きいと話すのは、「すぐに相談できる環境ができたこと」です。痛みや違和感が出てから慌てて対応するのではなく、日頃から身体のことを相談できる相手がいる。その安心感が、結果として強度の高い練習に思い切って取り組める土台になっているといいます。

「まずは、すぐに相談できる環境ができたのが大きいですね。安心感がありますし、その分、強度の高い練習にも取り組みやすくなりました」

以前は、強い練習をしても、そのまま“やりっぱなし”になってしまう部分もあったそうです。追い込むことはできても、その後に身体をどう整えるか、違和感とどう向き合うかまでは十分に言語化されていなかった。そこに、髙橋さんという“日常的に相談できる専門職”が入ったことで、学生たちの意識は少しずつ変わってきました。練習をすることと、身体を整えることが、別々のものではなく一続きのものとして捉えられるようになってきたのです。

支援を”当たり前”にしないために

ただ、大束監督が評価しているのは、ケアを受けられる体制が整ったことだけではありません。むしろその先にあるのは、学生が自分で考え、自分で整えられるようになることです。支援があるから任せきりになるのではなく、支援があるからこそ自分の身体に目を向ける。その状態をつくりたいという思いが、監督の言葉から強く伝わってきました。

「この状況を学生が当たり前に思ってほしくない。将来のことも考えて、自分でセルフケアできる選手になってほしい。ケガをする場所は、その人にとって弱点でもあるので、そこを自分で意識してケアできるようになるといいですね」

この言葉は、第2回・第3回で紹介した選手たちの変化とも重なります。不安を抱えたままプレーするのではなく、身体の状態を理解し、必要なケアを選び、少しずつ自分で整えていく。その力は大学4年間だけで終わるものではなく、卒業後も競技を続けるとき、あるいは社会に出てから自分の身体を守るときにも生きていきます。

頼ってよい文化をどうつくるか

一方で、体制が整ってきたからこそ見えてきた課題もあります。大束監督は、まだ学生の中には「どう頼ったらよいか分からない」部分もあると率直に話してくれました。サポートがあることと、それをうまく使えることは同じではありません。だからこそ、頼ってよいことを周囲が伝え続ける必要があるのでしょう。

「もっと多くの学生が関わって、実感してもらえたらと思います。頼っていいんだということを、こちらからも伝えていきたいです」

この一言には、チームづくりの視点がにじみます。競技力の高い集団であるほど、“自分で何とかしなければならない”という意識が強くなりやすいものです。しかし、本当に強い組織は、必要なときに助けを求められる組織でもあります。相談できる空気、身体のことを話してよい文化、専門職と連携しながら前へ進める関係性。その積み重ねが、チーム全体の強さを支えているのだと感じました。

最後に、今後の目標について伺うと、大束監督は「男女そろって団体優勝(アベック優勝)、そしてその先には、自分を超える学生を育てたい」と語りました。その視線は、今の結果だけでなく、未来に向いています。だからこそ、このボランティア活動もまた、目先のケガ対応ではなく、学生の未来を支える取り組みとして位置づけられているのだと思います。

Profile
大束忠司(おおつか ただし)
2004年 アテネ五輪 男子複・混合複に出場
2008年 北京五輪 男子複5位入賞
2009年 現役引退。同年、日本体育大学バドミントン部コーチに就任
全日本学生連盟常務理事、関東学生連盟副会長などを務める

 

Next  次回、最終回では、現場で学生と向き合い続ける髙橋さん自身の言葉を通して、この活動の意味と広がりを紹介します。